さいしょに
当記事は事例分析シリーズです。
記事作成の都合上、前記事と同内容が含まれますのでご注意ください。
「※初回用」って書いてる折り畳みの部分が重複部分だよ! 初回の人だけ開いて読んでね!
一発合格道場(※初回用)
はじめての方に向けて、「一発合格道場」について少しだけ補足を。
中小企業診断士の受験支援団体である「一発合格道場」に所属(2022年3月~2023年2月)しています。
一発合格道場は、メンバーの持ち回りでブログによる試験対策等をお届けしています。
僕はその13代目(12名)で活動しています。
それぞれ得意分野を中心に個性的な記事を公開していますので、中小企業診断士の受験を検討されている方はぜひご覧ください🐰
この「一発合格道場」のブログで、僕は「令和3年度の二次試験再現答案分析」というシリーズを担当していました。
メンバー全員分の再現答案を紹介しきれない分を、こちらのブログでやりたいと思います!
一発合格道場で既に公開済の3名(リット、あらきち、まん)はこちらを見てね。
こちらのブログでは毎回、メンバー1名分の再現答案を分析していくよ!
令和3年度事例Ⅰ、今回の再現答案はこの方!
はじめまして!
一発合格道場13代目の「りいあ」です。
道場の記事はこちらです。
今回は「りいあ」です。
令和3年度の事例Ⅰ:開示得点76の再現答案を分析していきましょう!
令和3年度_事例Ⅰ
全体イメージ解説(※初回用)
全体イメージ
令和3年度の事例Ⅰは印刷業!
事例Ⅰは事業承継がテーマになりやすいこともあり、社長が何代も出てくることが多いです。
時制表現(誰の代でやったか)が大事になりますので事例Ⅰでは特にご注意を!
令和3年度事例Ⅰの流れを、時系列で示したものが下図になります。
当然ですが、こんなもん悠長に試験中に書いている余裕はありません。
でも、練習時には非常に効果があると思っています。
慣れてくると記号や略語で表現することで時短もできますので、二次試験を勉強し始めた最初の1~2事例くらいはここまで作ってもいいかなと個人的に思っています。
基本の流れは、初代が工場で印刷していたのを、二代目がファブレス化で外注を利用し始めた。
外部環境の変化による競争激化に対応すべく新天地に踏み出し、三代目のノウハウや人脈を活かして広告事業を始めたけどうまく行ってない。
どないしたらええんやろうか? みたいな感じですね。
それでは各問題の再現答案を比べていきましょう!
第1問
【第1問】(20点)
2 代目経営者は、なぜ印刷工場を持たないファブレス化を行ったと考えられるか、100 字以内で述べよ。
【趣旨】※公式はこちら
ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分について、経営戦略の視点から分析する能力を問う問題である。
◆A:ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分 → 経営資源の集中投下
◆B:経営戦略の視点 → 戦略レイヤー(経営者視点)
「A:ニッチ戦略」「A:高付加価値分野への経営資源の再配分」の二点から、「ファブレス化により強みを強化し、得意分野に経営資源を集中したかったから」というメッセージが浮かび上がってきます。
また「B:経営戦略の視点」から今回は戦略レイヤーが求められていることが分かります。
「何を実現するか」を問われており、「どうやって実現するか」までは今回問われていないという認識で良さそうです。
次にふぞろいの観点は主に以下の3つになります。
二代目の戦略単体で問われているため、時制に注意し三代目の施策と混同しない様にする必要があります。
【(ふぞろい)観点】
●C:外部環境の変化に言及できているか(外部環境という「因」によりファブレス化した「果」、となる様に因果を繋げる)
●D:戦略を記載しているか(今回はこれが趣旨の「経営資源の集中投下」に繋がる様に設定する)
●E:戦略の効果を記載しているか
【趣旨】と【観点】の両面から再現答案を分析していきます。
再現答案
※「▼」をタップでウィンドウが開きます(タブで切り替えて各項目をご確認ください。)
【趣旨】
確認するポイントは以下の2点です。
ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分について、経営戦略の視点から分析する能力を問う問題である。
◆A:ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分 → 経営資源の集中投下
◆B:経営戦略の視点 → 戦略レイヤー(経営者視点)
【観点】
確認するポイントは以下の2点です。
●C:外部環境の変化に言及できているか(外部環境という「因」によりファブレス化した「果」、となる様に因果を繋げる)
●D:戦略を記載しているか(今回はこれが趣旨の「経営資源の集中投下」に繋がる様に設定する)
●E:戦略の効果を記載しているか
第1問 攻略の鍵と思われるポイント
・中小企業の常套手段である「経営資源を得意分野に集中する差別化集中戦略」をベースにする
・使用する要素は極力、与件文から使ってなるべくなら言い換えしない
・足りない要素は一次試験の知識(ファブレス化のメリットなど)から補完
事例Ⅰは困ったら「差別化」「シナジー」「連携」あたりを思い浮かべると良いかも。
今回のA社には当てはまらなかったけど、「大口顧客への依存の回避」なんかも定番だよね。
定番ばかりが出題されるとは限らないけど、みんなができる定番問題は押さえておきたいよね。
第2問
【第2問】(20点)
2 代目経営者は、なぜ A 社での経験のなかった 3 代目にデザイン部門の統括を任せたと考えられるか、100 字以内で述べよ。
【趣旨】※公式はこちら
先代経営者からの事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げに関して、経営組織の視点から分析する能力を問う問題である。
◆A:事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げ
◆B:経営組織の視点 → 幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」を利用
後継者の育成を含めた次代の組織作りが問われています。
特に今回は「経営組織の視点」と趣旨に明記されていますので人事のみの視点にならない様に注意が必要です。
次にふぞろいの観点は主に以下の3つになります。
【(ふぞろい)観点】
●C:事業承継
●D:前職の知見・ノウハウ
●E:戦略の効果
【趣旨】と【観点】の両面から再現答案を分析していきます。
再現答案
※「▼」をタップでウィンドウが開きます(タブで切り替えて各項目をご確認ください。)
【趣旨】
確認するポイントは以下の2点です。
先代経営者からの事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げに関して、経営組織の視点から分析する能力を問う問題である。
◆A:事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げ
◆B:経営組織の視点 → 幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」を利用
【観点】
確認するポイントは以下の2点です。
●C:事業承継
●D:前職の知見・ノウハウ
●E:戦略の効果
第2問 攻略の鍵と思われるポイント
・代替わりを含む場合、後進育成や事業承継要素の導入を意識しておく
・経営組織の観点(権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション)を漏らさない
※人材採用など人事寄りの要素を入れた場合も、最終的には組織観点に繋げるとリスク分散できる
(〇〇な人材の採用により組織を活性化、など)
・人材採用については文字数に余裕があればどんな人材(今回ならデザイナー)まで踏み込むと加点が期待できそう
人材採用は配置転換は事例Ⅰで定番!
人材面強化については「資金難」などの条件が無ければ採用も視野に入れると手札が増えて楽になります。
あとは文字数との兼ね合いだけど、「どんな人材か」まで具体化できれば加点も期待!
要素を詰め込むために、文字を節約するテクニックも大事だね。
第3問
【第3問】(20点)
A 社は、現経営者である 3 代目が、印刷業から広告制作業へと事業ドメインを拡大させていった。
これは、同社にどのような利点と欠点をもたらしたと考えられるか、100 字以内で述べよ。
【趣旨】※公式はこちら
事例企業の競合との差別化や新規事業と既存事業とのシナジー効果について、事業戦略の視点から分析する能力を問う問題である。
◆A:競合との差別化、既存事業とのシナジー効果
◆B:事業戦略の視点で分析 → 「広告制作業で何をするか」を問われている
事業ドメインの拡大が生んだ利点と欠点、それを「差別化」「既存事業とのシナジー」で表現する問題です。
事業戦略視点のため「経営全体の戦略」からひとつレイヤーが下がり、「広告制作業」の面で考える必要があります。
利点と欠点については(内部/外部)の観点で見るのがセオリーの一つです。
要素が足りないときには(内部/外部)の観点で与件文から使えそうな要素を拾いましょう。
【(ふぞろい)観点】
●C:利点(内部/外部)
●D:欠点(内部/外部)
【趣旨】と【観点】の両面から再現答案を分析していきます。
再現答案
※「▼」をタップでウィンドウが開きます(タブで切り替えて各項目をご確認ください。)
【趣旨】
確認するポイントは以下の2点です。
事例企業の競合との差別化や新規事業と既存事業とのシナジー効果について、事業戦略の視点から分析する能力を問う問題である。
◆A:競合との差別化、既存事業とのシナジー効果
◆B:事業戦略の視点で分析 → 「広告制作業で何をするか」を問われている
【観点】
確認するポイントは以下の2点です。
●C:利点(内部/外部)
●D:欠点(内部/外部)
第3問 攻略の鍵と思われるポイント
・趣旨にもある「差別化」、「シナジー」という定番キーワードをそのまま利用する
・利点、欠点ともに内部と外部から多面的な解答をする
・取り上げる要素は与件に明記がある、もしくは一次試験知識の内容を優先(誰でも思いつくものを優先)
内部と外部の視点については問題文には記載がありません。
事例Ⅰに限らず、解答を作るときには「多面的に」を意識しましょう!
環境軸で見る「内部・外部」の視点と、時間軸で見る「短期・長期」あたりは解答の視点として鉄板だね!
第4問
【第4問】(20点)
2 代目経営者は、プロジェクトごとに社内と外部の協力企業とが連携する形で事業を展開してきたが、3代目は、2代目が構築してきた外部企業との関係をいかに発展させていくことが求められるか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
【趣旨】※公式はこちら
協力企業との関係とネットワークの構築について、助言する能力を問う問題である。
◆A:協力企業との関係
◆B:ネットワークの構築
ここだけすごくフワッとしています。
捉えどころの無い趣旨なだけに、受験者の中でも最も解答に差が出たことが予想されます。
一次試験のフレームワークに沿うなら、幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」、特に「ネットワーク」「コミュニケーション」あたりに照準を当てて解答していくのがセオリーです。
【(ふぞろい)観点】
●C:発展のための取り組み
●D:取組の効果
【趣旨】と【観点】の両面から再現答案を分析していきます。
再現答案
※「▼」をタップでウィンドウが開きます(タブで切り替えて各項目をご確認ください。)
【趣旨】
確認するポイントは以下の2点です。
協力企業との関係とネットワークの構築について、助言する能力を問う問題である。
◆A:協力企業との関係
◆B:ネットワークの構築
【観点】
確認するポイントは以下の2点です。
●C:発展のための取り組み
●D:取組の効果
第4問 攻略の鍵と思われるポイント
・発展のための取組の観点として関係性の強化をベースに考える
・他の発展のための取組として、組織面で情報共有やコミュニケーションの活発化、連携体制の強化を挙げると加点が期待できそう
・効果については内部の視点で組織活性化、外部の視点で新規需要開拓や売上向上などA社の抱える課題にリンクさせると説得力が増す
この第4問が、令和3年度事例Ⅰの中でも一番難しかったと思う。
何を書いていいか分からない問題は、各事例で1問くらいは絶対に出るので、焦らず基本に忠実に!
何を書いたらいいか分からないときは、周りの受験生も分かってないからね。
そういう時こそ基本に忠実に、与件から「当たり前」の解答を導き出そう!
第5問
【第5問】(20点)
新規事業であるデザイン部門を担う 3 代目が、印刷業を含めた全社の経営を引き継ぎ、これから事業を存続させていく上での長期的な課題とその解決策について 100 字以内で述べよ。
【趣旨】※公式はこちら
次世代経営者の事業戦略や経営組織の構築に関わる論点について、提言する能力を問う問題である。
◆A:次世代経営者の事業戦略
◆B:経営組織の構築 → 幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」を利用
次世代となっているので3代目の事業戦略、つまり現時点から未来に向かっての戦略を提言します。
提言という言葉を使っていますが、ほぼ助言問題ですので助言と言い換えてしまっても問題ないと思います。
【(ふぞろい)観点】
●C:長期的な課題
●D:解決法
【趣旨】と【観点】の両面から再現答案を分析していきます。
再現答案
※「▼」をタップでウィンドウが開きます(タブで切り替えて各項目をご確認ください。)
【趣旨】
確認するポイントは以下の2点です。
次世代経営者の事業戦略や経営組織の構築に関わる論点について、提言する能力を問う問題である。
◆A:次世代経営者の事業戦略
◆B:経営組織の構築 → 幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」を利用
【観点】
確認するポイントは以下の2点です。
●C:長期的な課題
●D:解決法
第5問 攻略の鍵と思われるポイント
・長期的な課題は与件文から拾うなら「売上拡大」や「営業力強化」
・経営組織の構築を内部の視点(組織作り/活性化等)と外部の視点(連携等)で捉えると多面的な解答に
・課題と解決法の因果関係を意識する
事例Ⅰは人事・組織がテーマ!
人事か組織か、どっちの視点で行くかって結構迷うよね。
でも、試験時間は限られてるから、厳密に区切るところまではしなくてもいいんじゃないかなって思う。
広く「経営組織の構築」と捉えたら、人事の観点に分類されてる「採用」とか「配置」なんかも当てはまるしね。
人事・組織、の分類は試験本番では目安レベルに留めておくのがお薦め!
事例Ⅰのフレームワーク「幸の日も毛深い猫」はこちらを見てね。
それじゃ、今回の再現答案分析はこれでおしまい!
皆さんお疲れさまでした!
ちなみに、りいあがこの令和3年度事例Ⅰを解いた時の手ごたえってどうだった?
設問4・5が難しくって時間が足りなくて、なんとか空白を埋めた感じ。
あとは、設問3で後継者育成の視点漏れ、事例5は時間不足と的外れ感があったかな。解答直後は限られた時間でよくやったと自信持てたよ!
だから事例2以降に勢いがついたけど、今見ると至らない点が多いね。
試験直後の予想は70点以上だったので開示得点とも一致だね。
設問4と5は僕も含めて、みんな苦労してたね。
手ごたえと得点の一致はさすが!
りいあ、ありがとう!
はーい。
じゃ、また出番の時は呼んでね!
皆さん、ご覧いただきありがとうございました。
さいごに
二次突破への取組(※初回用)
色々と再現答案に対して分析・指摘をしてはいますが、これも絶対に正解かと言われるとそんなことは無いと思います。
二次試験は受験生の皆さん自身が自分で事例を分析し、自分が80分で解答できるだけの解法を作り上げていく試験です。
「解法を育てていく試験」というのがミソで、他人の方法をモロパクリしていても安定した実力は身に付きません。
パクってから如何に自分に合わせてカスタムできるかが勝負です!
僕の二次試験は、ほぼ独学(あとは診断士ゼミナールを事例Ⅳだけ使用)でした。
一番困ったのは自己採点で、事例Ⅰ~Ⅲではふぞろいを使ったキーワード採点しかできなかったこと。
勉強仲間が居なかったので、効率の悪い方法になっていても誰も指摘してくれませんでした。
今回の記事で使っている分析方法はスマートとは言えませんが、【趣旨】とふぞろいさえあれば誰でもできる方法です。
皆さんも事例を解いた後、公式から該当年度の趣旨を探し、ふぞろい片手に解答を分析してみて下さい。
そして、答案分析に慣れてきたら自分なりの分析を加え、ブラッシュアップしていきましょう。
僕の場合、趣旨に沿って真正面から解答したり、キーワードの因果関係を意識したりといった手法に出会い、納得の行く解法に到達したのは二回目の二次試験直前でした。
読者の皆さんには、解法完成までの手順を少しでもショートカットして頂きたいとの想いから、今回の事例分析では「自分で採点出来るようになる」というのを意識して記事を作っています。
二次試験は絶対的な模範解答がありません。
中小企業診断士の二次試験は、試験当日までにどれだけ「自分に最適化した解法」を作り上げられるか、そしてその解法を当日に再現できるかが全てです。
この記事が、皆さんの「自分が80分で解ける解法」完成までの第一歩になれたら良いなと思っています。
みなさんお疲れ様でした!
さいごに令和3年度の道場13代目の再現答案まとめと、道場でやった「リット・あらきち・まん」3人分の分析記事へのリンクをご紹介しておきます。
事例分析を進める際の材料として、ぜひお使いください!
みんなもぜひ令和3年度の事例Ⅰを解いた後は、趣旨とふぞろいで答案を分析してみてね!
次回の再現答案分析も事例Ⅰ。
開示得点:75の「まよ」の再現答案です。
皆さん初めまして。
よろしくお願いします。
次回もお楽しみに!