さいしょに
一生使えるスキルって何だろう?
…って考えたことはありますか?
スキルアップを考える上で、まず意識するべきはスキルの種類です。
分類方法はいくつかあると思いますが、僕の場合はこの2つに分けて考えています。
①:社内での作業に直結する業務スキル
②:社内の業務に限らず使える汎用スキル
このうち、伸ばしにくいのはどちらでしょう?
僕は②の汎用スキルだと考えています。
なぜかというと、①の業務スキルって日ごろから触れる機会も多いので、知識やノウハウを獲得するチャンスが多いんです。
つまりこっちは「慣れる」ことができる。
それに対して②の汎用スキルは日ごろの仕事では身につきにくいものも多いよね。
汎用スキルはプレゼンや文章力、ITスキルなんかの、「どの会社でも」「どんな場面でも使える」スキルをイメージしてもらえるといいかな。
習得がなかなか難しい汎用スキルですが、習得すれば一生使えます。
業務スキルはその会社、その部署の作業に特化するため他所で通じないものが多くなります。
これに対して汎用スキルは、どんな場面でも腐ることがありません。
僕の場合、新卒で就職してから大規模~小規模の会社員や個人事業主など色々と経験してきました。
その中で特に役に立っているのは文章力とITスキルの2つです。
ITスキルについてはまた別の機会にご紹介するとして…
今回は、「文章力」にスポットを当ててお送りしたいと思います。
前置きが長くなりましたが、今日の目標はこの2つです!
文章力ってセンス?技術?
「文章力」について、皆さんはこんな風に考えたことは無いでしょうか?
文章力って結局はセンスの問題なんでしょ?
難しいのとか面倒なのはパス!
文章力の勉強会や研修の告知をすると、そんな風に言われることが多いです。
でも、一方では文章力を鍛えるための書籍は多く、様々な技術が紹介されています。
文章力は「センス」か?「技術」か?
僕は、どちらも正解だと考えています。
・優れたキャッチコピーやストーリーに求められるのは「ワードセンス」
・ビジネスシーンの文章で求められるのは「分かりやすさ」
前者は才能によるものが大きいです。
小説家やコピーライターの様に「人の心を揺さぶる」ワードセンスが必要です。
「大人も子供も、おねーさんも。」 ※任天堂『MOTHER2(マザー2)』
「うまい、やすい、はやい」 ※吉野家
訓練や模倣である程度は身につけられますが、一握りの天才には勝つのはなかなか難しい世界です。
これに対して、後者は技術がモノを言います。
ビジネスシーンの文章に求められるのは「誰が読んでも意図が正しく伝わる」こと。
つまり「分かりやすい」文章であることです。
「分かりやすい」文章を書くためのセオリーが確立されているため、技術を後天的に身につけることができます。
というわけで、今回は努力でなんとかなる方!
「分かりやすい文章」を書くための技術習得(=文章力アップ)を目指します!
文章力アップの取り組みって最初は結構大変。
でも、これからの人生でどれだけ多くの文章を書くことになるだろう?
って考えると、将来への投資としてはコスパ良いんじゃないかな?
分かりやすい文章を書くための文書力アップのポイント3選
文章力アップのためのポイントは3つ。
それじゃ、具体的な方法を勉強していこう!
①いきなり書き出さない
まず、文章作成を行う上で絶対やってはいけないのが「いきなり書き始めること」。
口頭での対話であればいきなり話しかけても問題はありませんが、文章はそうはいきません。
何かを人に伝えるうえで、口頭で伝えるのと文章で伝えるのとは全く別物であるということを、まず意識しましょう。
口頭で伝える | 文章で伝える |
---|---|
・伝える相手がそばにいる ・キャッチボール型(レスポンスあり) ・一回の情報量は少ない | ・伝える相手がそばにいない(場合が多い) ・一方通行(レスポンスなし) ・一回の情報量が多い |
口頭で相手に伝える場合は相手の反応を確認できます。
そのため、話の方向性がずれた時にその場で軌道修正が可能です。
これに対し、文章の場合は基本的に一方通行になります。
書いている内容が伝えたいものと方向性がズレてしまっても訂正できません。
そのため書き始める前に、最低でも「伝えたい結論」をしっかりと定めてゴールがズレない様にする必要があります。
僕が意識しているお薦めの方法はこちらです。
Ⅰ:伝えたい結論を定める
↓
Ⅱ:それを伝えるために必要な骨子を作る
↓
Ⅲ:作成した骨子に説得力を持たせるためのエピソードやデータを肉付けする
結論から逆算していく感じですね。
資格試験の場合は「Ⅲ」のエピソードやデータを与件文や問題文から探しますが、それ以外の場合は自分の経験や調査したデータを使うことが多いです。
ビジネスシーンの文章は「誰が見ても同じ理解」が鉄則!
Ⅰ~Ⅲどれも重要だけど特に大事なのは「Ⅰ」の結論を決めておくこと!
ゴールさえしっかり決めておけば、脱線したときに書いてる途中で自分で気づけるのでお薦めだよ!
②文章作成のセオリーを守る
文章作成にはコツ(セオリー)があります。
人によって合う・合わないは存在しますが、今までの経験上で最も腹落ちした方法をご紹介します。
それが、「発散」→「(取捨) 選択」→「構成」の繰り返しで進めていく方法です。
「発散」では、まず文章を作成するための材料を集めていきます。
例えば「自分の強み」についての文章を作成する場合であれば、「好奇心」「責任感」「ITスキル」など単語や要素のレベルでひたすら書き出していきます。
要素の正誤や使用可否は後で判断しますので、とりあえず思いついたことは何でも書き出してOKです。
ブレインストーミングに近いですね。
ポストイットに書き出していくと、後で貼り替えできるので便利です。
パソコンが得意な方にはマインドマップというツールもあります。
僕の場合は状況によって使い分けています。
自分一人で作業するときはXmindというマインドマップツール、何人かで作業する場合はポストイットを使ってグループワークっぽくすることが多いです。
「選択」では要素の選択を行います。
「発散」で出てきた要素から、今回の文章で使わないものを候補から外していきます。
「発散」で使ったポストイットを並び替えても良いですし、テキストエディタを使ってデータ化しても構いません。
要素を候補として残すかどうか、ちょっとでも迷ったら保留して、次の「構成」で判断します。
「構成」では使用する要素の候補を組合せたり、使用する順番を決めていきます。
この時点で文章の骨子を作るイメージです。
例えば「自分の強み」についての文章を作成する場合であれば、こんな感じです。
「責任感」、「調整力」、「大学」、「社会人」、「バイト」、「リーダー」、「仲間」、「発表資料作成」、「徹夜」、「達成」
この後は、「発散」→「選択」→「構成」のステップを繰り返して骨子の精度を上げていきます。
個人的に最も重要と考えているのは最初の「発散」のステップ。
ここで、文章の材料となる要素をいくつ出しておけるかで文章の精度がほぼ決まるって言っていいと思う。
「発散」のステップを飛ばしちゃうと、後から困るんだよね。
「書いてみたけど、文字数足りなくて関係の薄い要素を無理やり捻じ込んだ」とか、みんなも経験ないかな?
③読み手ファーストを意識する
ここからは「読み手」の立場になって文章を作るためのポイントをご紹介します。
自分が作った文章は、「自分が分かる文章」になっています。
文章で使用している用語も自分が知っているものを使っているはずですし、書かれている内容も自身が経験した(もしくは調べた)ものなので当然ですね。
自分が書いた文章って、自分用に最適化されているんです。
なので他人から見たら分かりづらい表現になってたりするんですよね。
あと、自分が作った文章を自分が読むときって、内容をあらかじめ分かった状態で読むよね。
でも他の人は初見で読むことになるから、理解に差があって当然だよね。
ただ、初見でも「分かりやすい」文章ってありますよね?
それは読みやすい文章を、書き手が意識して作ってくれているからです。
読みやすい文章を書くための要点はいくつかあるのですが、お薦めは3つ。
1:主語と述語を離さない
2:文章の構造を意識する
3:スタートからゴールまでの流れを見出しレベルで確認する
次の文章を見比べて見て下さい。
どちらが理解しやすいでしょうか?
当社は、離職率を減らすための取組として、人事制度の抜本的な見直しのための意識調査を行った。
ほとんどの方が②を選ぶはずです。
①は主語と述語が遠くに配置されており、②は主語と述語が近くに配置されています。
主語と述語は近くに配置する方が読み手に理解しやすいです。
当社は(主語)、離職率を減らすための取組として、人事制度の抜本的な見直しのための意識調査を行った(述語)。
長い文章は、理解するためのエネルギーが多く必要です。
文章は不自然にならない程度に短く切ってあげると、読みやすく理解しやすい文章になりやすいです。
また、構造を意識することも大切です。
次の文章を見比べて下さい。
私はA社のマーケティング戦略が現在の市場環境にマッチしており非常に良いと思う。
どちらが見やすいでしょうか?
今回も、ほとんどの方が②を選ぶはずです。
①が分かりにくい理由は、1文の中で主語と述語のペアの中に、別の主語と述語が入っている『入れ子構造』になっているからです。
私は(主語1)A社のマーケティング戦略が(主語2)現在の市場環境にマッチしており(述語2)非常に良いと思う(述語1)。
入れ子構造は理解に時間がかかるだけでなく、読み手に内容が正確に伝わらない可能性もあります。
②の様に文章を分けるのがお薦めです。
最後の要点は、スタートからゴールまでの流れを見出しのレベルで確認する癖をつけることです。
これはひとつひとつの文章というよりは、「全体を通して一貫性があるか」ということです。
ゴールを最初に決めておかないと、どんどん話が逸れて何が言いたかったか分からない文章ができあがります。
そのため「NG行動を避ける」でも解説した通り、最初にゴールを決めておく必要があります。
ただ、最初にゴールを決めていても脱線に次ぐ脱線でゴールから遠ざかってしまうケースがあります。
作文が得意だったり、書くこと自体が好きな人に多いです。
書きたいことがどんどん浮かんできて話が逸れたり、本線に関係ない部分のボリュームが増えるパターンですね。
僕もこの傾向があるので、文章を書く際にはスタートとゴールを強く意識して、話が逸れない様に注意しています。
脱線を防ぐ一番良い方法は、先に見出しを全て作ってしまうことです。
※ブログであれば見出し、レポートであれば章のタイトル
たとえば、このブログ記事であれば見出しは以下の通りです。
◆さいしょに
◆文章力ってセンス?技術?
◆分かりやすい文章を書くための文書力アップのポイント3選
∟①NG行動を避ける
∟②文章作成のセオリーを守る
∟③読み手ファーストを意識する
◆さいごに
スタートからゴールまでの道筋を見出しとして先に作っておき、それぞれの見出しに対して後から中身を付け足していく感じです。
全体の流れが自然かどうかの確認も、この見出しのレベルでやります。
見出しだけを読んで、「最終的に何が言いたいか」がイメージできればOK。
この方法だと、見出しの作りさえミスらなければ脱線しようがないんだよね。
書きながら見出しを多少修正するくらいはOKですが、慣れるまでは見出し通りに作るのがお薦めです。
逆に言えば、「見出しだけで言いたいことが分かるまで書き出さない」ということです。
見出しが出来たら、それが相手に伝わる最適な内容になっているかを確認します。
確認の観点としては「言いたいことを伝えられるか」です。
「自社の人事制度の良さを伝える」をテーマにした、以下の2つの例を見比べて下さい。
・採用市場の動向
・他社の人事制度
・他社の人事制度のメリット、デメリット
・自社の人事制度
・自社の人事制度のメリット、デメリット
①はひと通り必要な情報が揃っているように見えますが、他社の説明が半分近くを占めており無駄が多いです。
また「採用市場」という全体の説明から入っているため、「自社の人事制度の良さを伝える」というテーマにたどり着くまでに時間がかかります。
見出しのレベルでこれなので、文章になると読み手が迷子になります。
「分かりやすい文章」は、読み手が迷わずゴールにたどり着ける文章です。
文章を書きあげてからの修正は心が折れるので、見出しレベルで軌道修正する癖を付けましょう。
②はPREP法と呼ばれる説明技法そのままなので、ピンときた方も多いかもしれません。
Point(結論)→ Reason(理由)→ Example(具体例)→ Point(結論)の頭文字を取ったもので、自分が言いたい結論を頭と最後に持ってくる方法です。
こちらは最初に結論から入るため、読み手からすると「これを伝えたいんだな」とイメージしやすくなります。
書き手と読み手で最初に結論を共有することで読み手の理解を助け、伝わる精度を高めます。
読み手を迷子にする可能性も低くなるので、ぜひお試し頂ければと思います。
このPREP法については、また別の記事で詳しくご紹介できればと考えていますのでお楽しみに!
さいごに
ここまで「分かりやすい文章」を書くための基本の考え方を、一緒に勉強してきました。
ざっくりまとめてみるよ!
【分かりやすい文章を書くためのポイント】
①いきなり書き出さない
②文章作成のセオリーを守る
◆「発散」→「(取捨) 選択」→「構成」の繰り返し
③読み手ファーストを意識する
◆主語と述語を離さない
◆文章の構造を意識する
◆スタートからゴールまで見出しのレベルで流れを確認する
今回は「分かりやすい」文章を書くための基本的なポイントを3つご紹介しました。
意識するポイントが多くて最初は大変ですが、慣れると自然にできるようになります。
「主語と述語を離さない」「文章の構造を意識する」の2つだけでも文章の分かりやすさが全然違ってきます。
この2つだけでも文章力が2レベルくらい上がるので、まずはこの2つを意識してみて下さいね。
最初から全部一気にやろうとせず、ひとつずつ自分のモノにしていこう!
文書力は考えれば考えるほど、書けば書くほどレベルアップしていくよ!
次回以降はしばらく、一発合格道場の延長戦として中小企業診断士二次試験:令和3年再現答案分析の続編を予定。
道場ブログで紹介した3名以外の再現答案分析をやります。
道場ブログと合わせて、一発合格道場13代目の12人全員分の再現答案分析が揃う予定なのでお楽しみにね!