さいしょに
以前、企業の現状を分析するSWOT分析について記事を書きました。
SWOTの「S」は「強み」でしたね。
今日は「強み」を見つけるための方法をご紹介します。
今回、取り上げるのは「VRIO分析」!
SWOT分析の事前に実施されることも多いよ!
今日の目標はこの2つです!
経営戦略2つの視点
まずは企業がとるべき経営戦略についての2つの視点「リソース ベースド ビュー」と「ポジショニング ビュー」について、特徴と違いを説明していきます。
企業が目指すべきは、他社と差別化して競争優位性を確保すること!
そのためにはまず差別化のネタになる「企業の強み」を見つけないといけないんだけど、これを探すために2つの視点が重要になるんですよね。
視点はもちろん色々あるんだけど、ここでは代表的な視点として「内」と「外」の2つで見ていくよ!
SWOTでも内部・外部の観点があったよね。
企業の強みに注目する経営戦略には、内部と外部に注目した考え方として代表的なものが2つあります。
ひとつは、企業が持つ内部資源の強みに焦点を当てた「リソース ベースド ビュー」という考え方。
もうひとつが、競合や取引先などの企業を取り巻く外部環境に焦点を当てた「ポジショニング ビュー」という考え方です。
簡単にまとめておきましたので、タブで切り替えてご確認ください。
◆ジェイ・バーニーが提唱(※元になったのはワーナーフェルトの論文)
◆ケイパビリティ派=企業の能力を活かして戦え
◆企業の内部資源に着目する
企業の内部資源に着目し、強みを活かして戦うべきだと言っているのがバーニー。
企業の外部環境に着目し、勝ち目のあるところへ行けと言っているのがポーターです。
この違いは中小企業診断士の試験範囲にも含まれていますので、しっかり区別しておいてくださいね!
結構、論争あったみたいだよね。
ケイパビリティ派 VS ポジショニング派
まあ、正直どっちも大事としか言えないんだけどね。
中小企業診断士の試験にも当然の様にどちらも出てくるし。
そもそも使い分けてナンボの観点だよね、この2つ。
今回はバーニーの「リソース ベースド ビュー」の中から、強みを探す分析法である「VRIO分析」を紹介したいと思います。
VRIO分析で組織内部の強みに注目する
「VRIO分析」の「VRIO」は以下の4つの頭文字を取ったものです。
- V:価値(Value)
- R:希少性(Rarity)
- I:模倣困難性(Inimitability)
- O:組織(Organization)
要は、「この4つを満たしていたら、それはその企業の強みになるよ」ってことね。
価値があって、希少で、パクられにくく…組織?
まあいいや、内容見ていこう!
まずはこちらの図をご確認ください。
VRIO分析では、企業の持つ経営資源を「競争劣位」から「経営資源の持つ持続的優位を活用できている」まで5段階に振り分けます。
「I:模倣困難性(Inimitability)」までを満たせば「持続的優位」が実現できるだけの優良な経営資源であると言えます。
それを活かすための組織構造になっていれば、その強みを活かして他社と差別化が可能!というイメージです。
O:組織(Organization)=「その強みをいま活かせる状態か」ってことね。
それでは、4つの項目をそれぞれ見ていきましょう。
V:価値(Value)
ここはそのまんま。
「価値があるかどうか」ってこと。
そりゃまあ、価値が無かったらそんな資源あっても意味ないし、これが一番に来るのは納得だね。
注意点としては、お金や機材といった「モノ」だけではないということです。
ノウハウや知見といった無形の知的財産なども対象になるので注意しましょう。
R:希少性(Rarity)
お次は「希少」かどうか。
ゲームをやる人なんかだとイメージしやすいかな?
「レア度」とかあるよね。
どこまでを「希少」として捉えるかは意見が分かれると思う。
ザックリ、「簡単に買える」もしくは「短期で習得できる」かどうかで考えると良いかも。
価値はあるけど希少ではない、という経営資源については「パソコン」が代表的です。
「パソコン」は便利だし価値はあるけど、持ってない企業の方が珍しいです。
競合が良く持っている、競合も入手しようとすれば短期間で獲得できるものは「希少ではない」と判定できます。
ただし、「パソコン(というより機械のカテゴリ)」でも、スーパーコンピュータの様に超高価であったり入手が容易でないものは「希少」と言えますので注意しましょう。
希少性あり | 希少性なし |
---|---|
スーパーコンピュータ 特注の加工機械 | 普通のパソコン 市販の加工機材 |
I:模倣困難性(Inimitability)
こちらは「パクられにくさ」!
中小企業診断士の試験では「模倣困難性」ってちょっと難しい言葉が出てくるので注意してね。
新商品って出ると、各企業がパクリまくるよね?
あれをされると、商品の旬が短くなっちゃう…
なので長期的な流行にするには「パクられにくさ」も大事ってことね!
簡単にパクられないようにするにはいくつかの方法があります。
ひとつは「歴史的な重み」があること。
つまり、それ自体がブランドになっちゃってるパターンです。
このことを、中小企業診断士の試験では「経路依存性がある」とも表現します。
その経営資源の入手方法が特定の経路に依存しちゃってるので、それ以外の方法だと結構厳しいよ、くらいのイメージです。
お菓子の老舗や歴史のある旅館なんかは、商品名や店名そのものに価値があり「その商品・その店」でないと意味がありません。
「とらや」の羊羹をもってきました
だとお土産に良いけど、
「とらやっぽい感じ」の羊羹をもってきました
だと『ちょっと…』って思いません?
簡単にパクられないようにする、ふたつ目は「法律でガチガチにガードすること」です。
要は「特許とか商標で守っちゃえ」ってことですね。
パクったら訴えられるわけなので、これは強い。
簡単にパクられないようにする、みっつ目は…これは手段というか「そういうもん」と思っていただきたいのですが「そもそも自分たちにも良く分かっていない」パターンです。
なんか分からないけど良いものが作れる。
でも、「何が直接の原因で、どういった理由でそうなっているのかを誰も知らない」というもの。
まあ、このパターンだとパクリようがないよね。
本人たちすら分かってないんだもんね…
たまたま商品の方向性が時流に乗った、とか偶然が絡むパターンもありそうだし。
これは狙ってできるものではありませんが、模倣困難性を獲得するパターンのひとつとして覚えておきましょう。
中小企業診断士の試験では、このことを「因果に曖昧性がある」と表現することもあります。
模倣困難性高い(パクられにくい) | 模倣困難性低い(パクられやすい) |
---|---|
特許を取得した技術で作った雑貨 100年の歴史がある著名な伝統的和菓子 | ありふれた素材で作った造型の良い雑貨 素材の組み合わせに真新しさのある新発売のスイーツ |
O:組織(Organization)
ここまで残った経営資源は「価値」「希少」「模倣困難」を満たしてるってこと。
「持続的優位」を得るための経営資源になる資格は十分!
最後は「組織でそれが活用できる状態かどうか」だね。
イメージとしてはこんな感じです。
- 組織で活かせる状態になっていない = 宝の持ち腐れ
- 組織で活かせる状態になっている = 経営資源を有効活用できている
組織で活かせる | 組織で活かせる状態になっていない |
---|---|
特許を取得した技術で生産するための設備がある その道50年のベテラン技術者が高い技術力を活かした製造だけでなく後進育成にも注力できる体制を取っている | 特許を取得した技術はあるが生産設備が無く外注のあてもない 技術に優れ生産ノウハウもある技術者がいるが人手が足りず誰でもできる簡単な作業に日々追われている |
ここまでをまとめるとこんな感じです。
V:価値(Value)
価値があるかどうか。
これが無いと、競争劣位となり他社に比べて不利になる。
中小企業診断士の一次試験を解いてみよう!
ここまで一緒に、VRIO分析について勉強してきました。
実力試しとして、中小企業診断士の一次試験に挑戦してみましょう!
H30企業経営論_第3問
企業の経営資源に基づく競争優位を考察する VRIO フレームワークにおける模倣困難性は、持続的競争優位を獲得するために必要な条件とされている。
この模倣困難性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
★模倣困難性=どれだけパクられにくいか★
ア:A社が、模倣対象のB社が保有する経営資源やケイパビリティと、B社の競争優位の関係を理解しているか否かは、A社がB社の模倣を行う時のコストに影響を与える要因にならない。
イ:C社が、新規事業に必要不可欠な経営資源を、その将来における最大価値を下回るコストで入手した場合、競合会社D社が、C社より相当に高いコストでも同様の経営資源を獲得できる限り、C社の経営資源に模倣困難性はない。
ウ:最先端の機械Eを使いこなすために熟練技能者同士の協力関係が必要であり、かつ、熟練技能者同士の協力関係の構築に相当な時間とコストを必要とする場合、最先端の機械Eを所有しているだけでは、模倣困難性による持続的競争優位の源泉にはならない。
エ:相当な時間を要して獲得したF社のノウハウやネットワークが、優れた製品を生み出すための重要な要素で希少性もあり、また競合会社が短期間で獲得するにはコスト上の不利が働くとしても、F社の模倣困難性を持つ経営資源にはなりえない。
さいごに
ここまでをざっとまとめてみます。
・VRIO分析は企業の強みを見つける「リソース ベースド ビュー」のひとつで企業の内部資源に着目する手法
・以下4つの観点で「その経営資源が企業の強みになり得るか」を見る
→「V」価値(Value):価値があるか
→「R」希少性(Rarity):希少性があるか
→「I」模倣困難性(Inimitability):パクられにくいか
→「O」組織(Organization):その経営資源が活かせる組織になっているか
・「V」~「O」すべてを満たすと「その経営資源が持つ持続的優位を組織で活用できている」状態で企業の強みとして優秀
本日はここまで!お疲れ様でした!
いかがでしたか?
今回は企業の強みを見つける方法をご紹介しました。
今回は「企業」が対象だったけど実は「個人」にも転用可能!
自分の「強み」を見つけるときにも。ぜひ使ってみてね!
見つけた強みはSWOT分析の材料としても使えます。
ぜひ、SWOT分析と合わせて使いこなしてくださいね。