【中小企業診断士二次試験】令和３年度_事例Ⅰ_趣旨とふぞろいで再現答案分析[どらごん：開示得点68]

ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分について、経営戦略の視点から分析する能力を問う問題である。
◆Ａ：ニッチ戦略、高付加価値分野への経営資源の再配分　→　経営資源の集中投下
◆Ｂ：経営戦略の視点　→　戦略レイヤー（経営者視点）

理由は、
印刷のデジタル化によって強みだった高度な専門的技術・知識や不要となり、
新規参入により印刷単価が下がったため、
ファブレス化によるディレクション業務へと特化し差別化を図ろうと考えたからである。

ディレクション業務という高付加価値化分野への特化と、差別化という方向性を捉えています。

理由は、
印刷のデジタル化によって強みだった高度な専門的技術・知識や不要となり、
新規参入により印刷単価が下がったため、
ファブレス化によるディレクション業務へと特化し差別化を図ろうと考えたからである。

戦略面については「何をするか（WHAT）」を解答するのがセオリーとなっており、「差別化する」という経営戦略を明示できています。

●Ｃ：外部環境の変化に言及できているか（外部環境という「因」によりファブレス化した「果」、となる様に因果を繋げる）
●Ｄ：戦略を記載しているか（今回はこれが趣旨の「経営資源の集中投下」に繋がる様に設定する）
●Ｅ：戦略の効果を記載しているか

理由は、
印刷のデジタル化によって強みだった高度な専門的技術・知識や不要となり、
新規参入により印刷単価が下がったため、
ファブレス化によるディレクション業務へと特化し差別化を図ろうと考えたからである。

デジタル化（因）→（果）高度な技術やノウハウ不要（因）→（果）新規参入（果）→（果）印刷単価低下、と綺麗に時系列で因果が繫がり、説得力が増しています。

欲を言えば、新規参入の部分に少し追加して「参入障壁の低下による新規参入」とするとさらに加点を見込めると思います。

理由は、
印刷のデジタル化によって強みだった高度な専門的技術・知識や不要となり、
新規参入により印刷単価が下がったため、
ファブレス化によるディレクション業務へと特化し差別化を図ろうと考えたからである。

ファブレス化　→　ディレクション特化　→　差別化、と戦略面での施策が順を追って登場しており非常に読みやすいです。

さらに加点を狙うのであれば、与件文から読み解ける「美術部門への特化(内部)」や「外部を含めた分業体制構築(外部)」あたりを入れておくと、ファブレス化した理由を更に強化し、内部と外部の視点を網羅出来てさらに多面的な解答になります。

理由は、
印刷のデジタル化によって強みだった高度な専門的技術・知識や不要となり、
新規参入により印刷単価が下がったため、
ファブレス化によるディレクション業務へと特化し差別化を図ろうと考えたからである。

戦略の効果として「差別化」が取り上げられており、ファブレス化をした結果として適切です。
今回のどらごんの解答は「外部環境の変化」の説明が非常に詳しく、そこに字数を割いています。
そのため戦略の効果については文字数の制限が厳しく、今回は「差別化」でも十分かなと感じました。

もし、多面的な解答にして安全策を取るなら、外部環境の変化について触れた要素をギュっと縮めて、戦略の効果に「顧客ニーズへの対応力強化」を挙げると良いと思います。
顧客ニーズへの対応は、分業体制にした理由として与件文に明記されており、加点が十分に見込めます。

先代経営者からの事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げに関して、経営組織の視点から分析する能力を問う問題である。
◆Ａ：事業承継や後継経営者の新規事業の立ち上げ
◆Ｂ：経営組織の視点　→　幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」を利用

理由は
①広告代理店勤務によるノウハウを活用すると共に、人脈を生かして有能な人材を採用するため
②自部門の管理と他部門との調整・コミュニケーションにより次期経営者としての育成を図るためと考えたからである。

次期経営者育成という、事業承継の要素に触れています。
①のノウハウ活用の部分に「新規事業の立ち上げ」の要素を含んでいると思いますが、明記しておいても良かったかなと思いました。

例えばこんな感じです。
①広告代理店のノウハウを新規事業に活かし、部門統括経験により次期経営者としての育成を図る
②人脈を活かしたデザイナー採用による人材変化、コミュニケーションにより組織を活性化

理由は
①広告代理店勤務によるノウハウを活用すると共に、人脈を生かして有能な人材を採用するため
②自部門の管理と他部門との調整・コミュニケーションにより次期経営者としての育成を図るためと考えたからである。

人事視点：人材採用
組織視点：コミュニケーション（による組織活性化）
と多面的に捉えられています。

コミュニケーション　→　経営者として育成、と繋げていますが、どちらかと言えば②の最初に挙げている「管理」の方が管理者育成とイコールで結びやすく感じます。

・管理　→　経営者として育成
・コミュニケーション　→　組織活性化
で分けるとスッキリします。

①広告代理店のノウハウを新規事業に活かし、部門統括経験により次期経営者としての育成を図る
②人脈を活かしたデザイナー採用による人材変化、コミュニケーションにより組織を活性化

●Ｃ：事業承継
●Ｄ：前職の知見・ノウハウ
●Ｅ：戦略の効果

理由は
①広告代理店勤務によるノウハウを活用すると共に、人脈を生かして有能な人材を採用するため
②自部門の管理と他部門との調整・コミュニケーションにより次期経営者としての育成を図るためと考えたからである。

管理面への期待と事業承継の視点を取り上げており、適切です。
さらに加点を狙う場合は「管理」に「権限委譲」を、「次期経営者育成」に「事業承継」の要素を足すと良いと思います。

理由は
①広告代理店勤務によるノウハウを活用すると共に、人脈を生かして有能な人材を採用するため
②自部門の管理と他部門との調整・コミュニケーションにより次期経営者としての育成を図るためと考えたからである。

ノウハウ活用と人材採用に触れており、上手くまとまっています。
字数に余裕があれば「デザイナー採用」まで言い切ってしまっても良いと思います。

理由は
①広告代理店勤務によるノウハウを活用すると共に、人脈を生かして有能な人材を採用するため
②自部門の管理と他部門との調整・コミュニケーションにより次期経営者としての育成を図るためと考えたからである。

事業承継と前職の知見やノウハウについては手厚い反面、効果の面がやや手薄という印象です。
他部門との調整やコミュニケーションから、組織活性化という効果は推測できるものの明記はされていないため加点要素としては厳しいかもしれません。

「次期経営者育成」「人材の採用」をやった結果、何を目指すのかという視点を加えられれば隙の無い解答になります。
要素として取り込むとすれば「新規事業の拡大」「組織活性化（を明記）」あたりが使いやすいと思います。

※②に「組織活性化」を明記
…コミュニケーションにより組織を活性化

※③を追加
③新規事業の拡大により既存事業依存を解消する

事例企業の競合との差別化や新規事業と既存事業とのシナジー効果について、事業戦略の視点から分析する能力を問う問題である。
◆Ａ：競合との差別化、既存事業とのシナジー効果
◆Ｂ：事業戦略の視点で分析　→　「広告制作業で何をするか」を問われている

利点は、
既存顧客に対して紙媒体に依存しない分野にも事業を広げ需要と市場を拡大し売上向上が図れる。
欠点は、
広告制作の分野は競合他社が多く競争も激しいため、新市場開拓のため営業に資源投入が必要であること。

新規事業の拡大と営業への資源投入を挙げています。
差別化とシナジーに直接かかわる文言が見られませんが、いずれも差別化に繋がる方針ではあるため趣旨を大きく外していません。

利点は、
既存顧客に対して紙媒体に依存しない分野にも事業を広げ需要と市場を拡大し売上向上が図れる。
欠点は、
広告制作の分野は競合他社が多く競争も激しいため、新市場開拓のため営業に資源投入が必要であること。

市場拡大と売り上げの向上を挙げており、広告事業の戦略として適切です。
紙媒体に依存しない（内部）、市場を拡大（外部）と、内部外部の観点で多面的な解答になっています。

●Ｃ：利点(内部/外部)
●Ｄ：欠点(内部/外部)

利点は、
既存顧客に対して紙媒体に依存しない分野にも事業を広げ需要と市場を拡大し売上向上が図れる。
欠点は、
広告制作の分野は競合他社が多く競争も激しいため、新市場開拓のため営業に資源投入が必要であること。

紙媒体に依存しない分野（内部）と、市場を拡大し売上向上（外部）で多面的な解答になっています。

欲を言えば、顧客へのアプローチは「既存」と「新規」の２通りあり、今回の解答では既存顧客へのアプローチに絞っていることで解答の幅を少し狭くしています。「既存顧客に対して」という書き出し方のため、対となる「新規顧客に対して」という視点を取り込むと安全です。

他に利点を挙げるとするなら、関連多角化のメリットである「経営リスクの分散」あたりが一番に挙げられるのではないでしょうか。

利点は、
既存顧客に対して紙媒体に依存しない分野にも事業を広げ需要と市場を拡大し売上向上が図れる。
欠点は、
広告制作の分野は競合他社が多く競争も激しいため、新市場開拓のため営業に資源投入が必要であること。

競合他社の存在＋競争が激しい（外部）＋営業資源の不足（内部）で多面的な解答になっています。
競合がいて競争が厳しい（因）→（果）営業資源の投入が必要、と因果も繋がっており、分かりやすいです。

協力企業との関係とネットワークの構築について、助言する能力を問う問題である。
◆Ａ：協力企業との関係
◆Ｂ：ネットワークの構築

職人等との協力関係を更に強固にするために連携を密にすると共に定期的に取引を発注しまた新たな有能な職人等を発掘することで円滑にプロジェクトチームが社内で形成されるようにする、といったことが必要である。

協力企業との関係性強化＋チーム内の運営円滑化と内外の視点で要素を網羅できています。
時系列も順序通りになっており、素直に納得できる文章構成です。
100文字近くを一文で綺麗に纏めるのは難しいので、流石ですね。

●Ｃ：発展のための取り組み
●Ｄ：取組の効果

職人等との協力関係を更に強固にするために連携を密にすると共に定期的に取引を発注しまた新たな有能な職人等を発掘することで円滑にプロジェクトチームが社内で形成されるようにする、といったことが必要である。

外部との関係性強化を軸に上手くまとまっています。
唯一の懸念は問題文で「協力企業」と指定されているのに対して、解答では「職人」に置き換わっているところです。

「外部企業に参加している職人」のニュアンスが伝わるので大きな問題ではないと思いますが、リスクを避けるのであれば連携対象を「外部企業」もしくは「協力企業」とする方が安全です。

与件文から、いままでは「プロジェクトごとに連携している」と読み取れるため、関係性強化のために定期的な関係を持つのは重要で、加点に繋がっていると思われます。

職人等との協力関係を更に強固にするために連携を密にすると共に定期的に取引を発注しまた新たな有能な職人等を発掘することで円滑にプロジェクトチームが社内で形成されるようにする、といったことが必要である。

取り組みについては量・質ともに非常にうまく要素を纏めていますが、効果にあたる部分がやや薄い印象。
プロジェクトチーム形成による組織活性化が推測できるものの、取組の効果と断じれる要素が見当たりません。強いて言えば「協力関係が強固になる」が効果としても考えられますが、こちらは他の要素との関係を見ても、取り組みとしてカウントした方が良さそうです。

取組の効果として挙げるなら、定番の「差別化」「高付加価値化」「競争力強化」「新規獲得」あたりが考えられます。

上の要素を取り込み、少し整理したものがこちらです。

定期的な取引により協力企業との関係性を強化。新たな有能な職人等を発掘することでプロジェクトチームの運用を円滑化し人材面含めて連携を強化することで差別化、高付加価値化を図り競争力の獲得を目指す。（96文字）

次世代経営者の事業戦略や経営組織の構築に関わる論点について、提言する能力を問う問題である。
◆Ａ：次世代経営者の事業戦略
◆Ｂ：経営組織の構築　→　幸の日も毛深い猫の後半「権限移譲/部門/階層/ネットワーク/コミュニケーション」を利用

課題は、
営業体制の強化により地場的市場ではない新市場を開拓することである。
解決策は、
営業部を新設し、印刷部門を縮小すると共に、適材適所の人員を営業部に配置し、新規事業での新市場を開拓することである。

新市場の開拓を取り上げており、長期的な目標として適切です。

課題は、
営業体制の強化により地場的市場ではない新市場を開拓することである。
解決策は、
営業部を新設し、印刷部門を縮小すると共に、適材適所の人員を営業部に配置し、新規事業での新市場を開拓することである。

営業体制の強化を軸に組織面についての課題と解決策に触れています。
営業力強化は与件文からも読み取れる内容で、第五問の解答としては採用率も高かったと予想されます。

●Ｃ：長期的な課題
●Ｄ：解決法

課題は、
営業体制の強化により地場的市場ではない新市場を開拓することである。
解決策は、
営業部を新設し、印刷部門を縮小すると共に、適材適所の人員を営業部に配置し、新規事業での新市場を開拓することである。

加点対象として考えられる要素を、多く取り上げることができています。
課題：営業体制強化　→　新市場開拓
解決策：営業部の新設＆他部門からのコンバート
と、関連のある項目で纏めており説得力があります。

ただ、課題と解決策の両方で「新市場開拓」を記載しており、重複が勿体なく感じます。

課題に「新市場開拓による収益性の向上」と収益性の要素を追加したり、解決策に「新規事業と既存事業のシナジーによる組織活性化で技術力の向上」など、営業以外の視点も入れると多面的な解答になり取りこぼしが少なくなります。