内部・外部分析の基本、SWOT分析を知ろう!【企業経営論】

もくじ

はじめに

はじめまして! このブログを書いているリットといいます。
中小企業診断士合格後、受験支援団体でブログや研修を担当しておりました。

「一発合格道場」という名前に覚えのある方は、初めましてじゃないかもしれませんが、こちらでもよろしくお願いします!

リット

このブログでは主に中小企業診断士という資格の試験範囲から、学生~新入社員あたりで知っておくと便利な論点についてご紹介しようと思っています。

きなお

中小企業診断士を受験される方は知識の復習に、そうでない方もビジネススキルの強化の第一歩にしていただけたら嬉しいです!

本日は経営分析の初級編!
SWOT分析です。
中小企業診断士の試験範囲としては、一次試験の「企業経営論」の内容ですね。

SWOTってなに?

リット

経済学部や経営学部の方は既にご存じかもしれません。
まずは「SWOTって何?」から行きましょう。

SWOT分析

SWOTは経営分析に使用されるフレームワークの一つです。

企業内部強みStrength)と弱みWeakness)、企業外部機会Opportunity)と脅威Threat)の4つの観点から分析を行います。
この4つの観点の頭文字を集め、「SWOT」と呼びます。

SWOT

4つの要素、それぞれについてはこんな感じです。

スクロールできます
種類内容主な対応
S
強み
企業の強みとなるもの、競合との差別化となるようなもの。
例:一貫生産体制が可能な設備、熟練職人のノウハウ、地域に根差した強い関係性
活かす
W
弱み
企業の弱みとなるもの。
例:営業力不足、設備老朽化による非効率な生産体制、取引先への強い依存体質
克服する
O
機会
市場のニーズや環境の変化のうち、自社にとって追い風となるもの。
例:介護用品→高齢化による需要増、食品宅配サービス→感染症等による外出の自粛
捉える
T
脅威
市場のニーズや環境の変化のうち、自社にとって向かい風となるもの。
例:飲食店→感染症等による外出の自粛、印刷業者→技術革新による参入障壁低下&競合の増加
回避or軽減する

内部の2つ、強みと弱みについては第三者を交えたヒアリングを行うことが多いです。
自社にいるとそれが当たり前になっているので意外と強みや弱みに気づいていないことが多く、第三者を交えた客観的な評価を行う必要があります。
※また、強みを探す手法もVRIO分析などいろいろあるのですが、それはまた次の機会でご紹介させていただきます。

外部の2つ、機会と脅威については自社を取り巻く外部環境からの分析を行います。
外部環境には、自社製品のターゲット市場だけでなくコロナ禍の様な社会的な規模の出来事も含まれるので範囲は広いです。

この様に内部と外部プラスとマイナスの2軸で企業の現状を分析するのがSWOT分析です。
内部は「自社でどうにかできるもの」、外部は「自社ではどうにもならないもの」という性質的な違いもあるので、そこにも注目しておきたいところです。

SWOTに関してはこれで完結するもの、というよりは今後の企業活動の指針を決めるための材料になることが多いです。
その体表的なものが、次でご説明するクロスSWOTと呼ばれるものになります。

クロスSWOT

クロスSWOT

使用する要素は4つのままですが、それぞれが交差(クロス)しています。
SWOTは現状分析、クロスSWOTは今後の戦略を立てるためのもの、とイメージすると区別しやすいと思います。

この中で特に重要とされるのは「機会 × 強み」です。

資金や設備、人材を含むすべての経営資本は有限です。
大企業でもない限り、この経営資本は常に不足しているのが実情です。

なので、弱みに経営資本を投入するよりは、苦手分野は他社に委託するなどして自社は自分の強みを伸ばすのが定石。
経営資本を自社の強みに集中し、強みを更に伸ばすことで他社と差別化し生き残りを図るイメージです。

そのため、自社の強みを活かして機会を捉える戦略が重要視され、経営分析でも真っ先に着目されるポイントとなります。
とはいえ、企業によっては課題が異なるため、あくまで一つの選択肢を示すものに過ぎません。
脅威への対応や弱みの克服への挑戦を重要視しなければならない局面もあります。

経営分析を始めると、どうしてもありがちなのが「自分が出した分析結果が正解」と思い込んでしまうことです。
SWOTによる現状分析、クロスSWOTによる戦略の模索、どちらも実施する人が変われば異なる結果が導き出されることもあります。
役職や自社での勤続年数によって見えてくるものが異なるためです。

経営学を大学で専攻した人だと、会社に入って「この会社は全然なってない」と感じることが多々あると思います(僕もそうでした)。
でもそれは、自分が会社の仕組みや運用を知らないだけかもしれません。

あくまで理論は理論、フレームワークは便利なものではありますが、妄信的にならない様に気を付ける必要があります。
フレームワークをはじめとする様々な便利なツール、それに振り回されずに使いこなせたらカッコいいですよね!

SWOT分析のメリットと留意点

リット

それでは、SWOTを使う上でのメリット、そして使用する上で注意してほしいなと思う留意点について簡単にご紹介していきたいと思います。

SWOT分析のメリット

まずはメリットから!

  • シンプルなので誰でもできる
  • 他の経営分析手法の素材として利用できる

最も特徴的なのは、強み弱み内部外部という4つの要素だけで行うため非常にシンプルで分かりやすいこと。
新入社員でも役員でも、どんな人でもすぐに参加できる分かりやすさが最大のメリットです。
さらに抽出された強みや弱みは他の経営分析手法と組み合わせることもできるため、経営分析の最初にSWOTを実施することも多いです。

  • 自己分析に流用可能
  • 内部と外部の定義を変えると様々なシーンに活用できる汎用性の高さ

企業向けのフレームワークではあるのですが、実は個人にも流用が可能。
特に、履歴書作成の前に自分自身をSWOT分析すると作成速度が段違いです。

まず、強みや弱みは履歴書の項目そのままですよね。
またターゲット企業がさらされている脅威を想像し、自分の強みでそれを補うことができれば志望動機としては最強。
たとえばこんな感じです。(設定は多少無茶がありますが、例ということでご容赦ください)

伝統工芸品メーカー

良かったら、皆さんも ↑ の設定で志望動機を考えてみてください。
社会人の方も、頭の体操にぜひ!
ちなみに、僕の作成した一例はこんな感じです(ボタンをタップで開きます)。

伝統工芸品メーカーへの志望動機(例)

私の強みは英語力と、ECサイトノウハウを持っていることです。
大学時代に海外製品を自作のECサイトで販売し、月間売上100万円を達成したこともあります。

近年、日本の伝統工芸品は海外での評価が高く、御社の伝統工芸品は海外で勝負できる商材だと確信しております。
私は、今までに培った英語力とECサイト販売のノウハウを活かし、御社製品を海外に販売し日本の技術力を世界に示したいと考えております。

少し言いすぎな気もしますが、強みの「英語力、ECサイト構築ノウハウ」を使って「海外需要の増大」という機会を捉えることに繋がっていることをご確認いただければと思います。
また、それが脅威である「日本市場の縮小」への対応策にもなっている、という感じですね。

履歴書や自己分析にも使えるので、SWOTは意外と活躍の場が広いです。
よかったら皆さんも、身近な問題に対してSWOTで分析してみて下さいね。

次にSWOT分析を使う上での留意点と、主な対処法です。

SWOT分析の留意点

  • 留意点:個人で行うと偏った意見が流出される可能性がある

企業をはじめとする組織に属する場合、立場によって情報量に差が生じます。
当然ですが新入社員よりも役員の方が、企業経営に関して持っている情報量は多いですよね。

このため、特定の個人でのみSWOTを実施しても、そもそも情報量の差があるため偏った結果になることが多いです。

そのため、なるべく正確な結果を導き出すには、様々な立場の人で集まりグループで行うことが重要になります。
もしくは第三者を交えるのも良い手です。
企業経営にコンサルを使う利点は、まさにこの第三者の視点を得られることにあります。

自社内では当たり前にやっていたことが実は凄いことだったり、自信満々に「強みです」とPRしていた技術がとっくに陳腐化していたり。

なるべく様々な視点から多面的に見ることが、SWOT分析の結果を意味のあるものにしていきます。
これは企業分析だけではなく、自己分析でSWOTを使用する場合にも言えますね。
自分の強みや弱みも、他の人から指摘されて「はっ」としたこと、ありませんか?

押さえておいて欲しいSWOTのポイント2つ!

他の人に「SWOTってなに?」と聞かれて、まず答えるべき代表的なSWOTの特徴をおさえておきましょう。

  1. SWOTは企業の現状を分析するもの
  2. SWOT分析は強み弱み内部外部の4つの要素で行う

もちろん、他にも押さえておくべきポイントはたくさんありますが、まずはこの2つで良いと思います。

中小企業診断士の一次試験を解いてみよう!

リット

ここまで一緒に、SWOTについて勉強してきました。
実力試しとして、中小企業診断士の一次試験に挑戦してみましょう!
まだ紹介していないものが含まれるので、まずは「」の選択肢だけ判断できればバッチリです!

H29企業経営論_第31問(3)
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
長年にわたり、羽毛布団の製造小売を行ってきた Y 社は、近年、拡大を続ける全国チェーンのインテリア専門店に羽毛布団の顧客を奪われてしまったため、新社長の P 氏は羽毛を原材料とした新製品の開発を通じて、新たな顧客を創造するという構想を練り始めている。所有する生産設備もうまく活用する形での新製品開発に向け、 P 氏は中小企業診断士である Q 氏から基本的な製品開発のプロセスについてアドバイスを受けている。
その結果、いくつかのコンセプト案がリストアップされた。
ここから一年間を費やしてそれらからいくつかの製品を市場投入段階まで到達させることを念頭に置いて、 P 氏はそのための準備に取り組んでいる。 P 氏は、まず③市場動向を把握し、競合となりうる製品・企業を特定するための作業に着手している。

文中の下線部③に関する記述として、最も適切なものはどれか。
※SWOTに関する「」の選択肢が〇か×かだけでもOKです!

: PEST 分析は、組織の外部環境を捉えるための方法である。これは、政治的環境、企業文化的環境、社会的環境、技術的環境というつの側面から外部環境を把握することを支援する。

:SWOT 分析は、組織の内部環境の把握に限定した方法であるが、自社の強みと弱み、機会と脅威のそれぞれを構成する要素を整理するために有用である。

: 相対的市場シェアとは、最大の競争相手の市場シェアで自社の市場シェアを割る(除する)ことで算出される数値である。この値が 50 %を超えていれば、自社はその市場のリーダー企業である。

: 有効市場とは、ある製品・サービスに対する十分な関心をもち、購買に必要な水準の収入を有しており、かつその製品・サービスにアクセスすることができる消費者の集合のことである。

リット

いかがでしたか?
中小企業診断士の試験は難度が高いと思われがちですが、基本的な論点も問われます。
意外と解けるもんなんだなーと思っていただけると嬉しいです。

さいごに

きなお

今日のまとめだよ!

①SWOT分析は内部の観点で「強みStrength)と弱みWeakness)」、外部の観点で「機会Opportunity)と脅威Threat)」の4つを使って分析を行う。

②強み・弱み・機会・脅威の4つを組み合わせたクロスSWOTもある。

③SWOT分析はシンプルで取り組みやすいが、客観的な評価ができる様になるべく第三者の視点を入れよう。

本文でもご紹介しましたがSWOTは企業の現状分析だけではなく、自己分析にも良く使用されます。
自分自身にSWOT分析を使うことで、自分のことが「見える化」できます。
副業で何かをはじめたり、自分で事業を起こそうとした時にもSWOTで自己分析してみるのもいいかもしれません。

入社後数年してから実施することが多い研修(3年目研修や5年目研修)でも「自身の強みや弱みを文章化し、次に目指すべきキャリアを意識させる」なんてこともやったするのですが、SWOTは比較的それに近いことができます。

今の自分に不安になった時や、逆にこれから目指すべき方向性が定まった時には、ぜひSWOT分析を使ってみてくださいね。
文字にして見える形にすることで、強みは自信に、弱みは克服するべき目標として、きっとこれからの皆さんの役に立ってくれるはずです。

きなお

強みを探す方法のひとつに「VRIO分析」という手法があるよ!
良かったら、こっちの記事も見てみてね!

リット

それでは今日はこれでおしまい!
また、お会いしましょう!

きなお

また見てね!

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この記事を書いた人

リットのアバター リット 中小企業診断士

新人教育やセミナー開催が強みの中小企業診断士
◆兵庫県在住
◆教育経験12年(SE:2年、PCスクール:7年、新人研修:3年)
◆中小企業診断士受験支援『一発合格道場』13代目

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